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「紙の上の魔法使い」感想

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"(c) 2015 UGUISUKAGURA INC."

面白かった。凄く面白かった。ただ満足はしていない。どうしたってモヤモヤしたものが残る。
かなり人を選ぶゲームだと思うので、最終的にどういう評価をつけるかは結構分かれると思う。
ネタバレふむと台無しになるのでレビューを見るのはおススメしない。
やるかどうかは体験版で判断しましょう。絵が可愛いからってキャラゲーだと思ってると痛い目見るよ。
以下ネタバレ感想。

終わるまで結構時間かかったなぁ。プレイ時間自体は普通でしたけど、期間はかなり長いですね。
年が明けるまでに半分くらいは終わってたんですけどね。
年が明けてから異様に忙しく、全然ゲームできなかったんですよ。
その所為でぶっ続けでやれれば1週間ぐらいで終わるはずなのに1ヶ月以上もかかってしまった。
もともと進めるのは遅いんですけど、それにしたってこれはかかりすぎだわ。

【感想】
本当に本当に面白かったんですけどね。
先が読めないストーリー。デレるとめちゃくちゃ可愛いヒロイン達。
OP・EDがないのは少しマイナスですかね。別にOPはなくてもいいんです。
公式サイトのPVがOPみたいなものだろうと勝手に思ってるので。
でもEDがないのは残念ですね。どうせあったとしても、最初以外は飛ばすだけかもしれませんし、
飛ばせなかったらそれはそれで文句を言ってたかもしれませんが、
終わったあとの余韻に浸るのにEDは重要だったりしますからね。
せめてエンドを迎えた後にパッとスタート画面が出てくるのはなんとかならなかったんでしょうか。
エンドを迎えた時は、ゲームを起動した時のように妃のブランドコールから始まって欲しかった。
システムもちょっと微妙。キャラごとの声の大きさのバラつきが多かったのと、
オートだと汀とかサブキャラのセリフの時だと切り替わるのにちょっとだけロスがあるのが気に食わない。
まぁそれは別にいいんです。
同時に、誤字・脱字やイベントCGとテキストとの齟齬などのバグ……みたいなものもありますが、
これもそんなに気になりません。確かに盛り上がるところで誤字見ると萎えますけどね。
でもそんな細かいところ気にして楽しめなくなるとバカみたいなので。
音楽もちょっと……。悪くはないんですがいかんせん暗めの曲が多い。
ストーリー展開からして仕方ないですが、やっぱり暗めの曲が多いと多少はテンション下がりますよね。
そんなこんなでエロゲーとしてはイマイチでしたけど、読み物としてはかなりの品質。
結末には理解も納得もしているけども、それと満足できるかはまた別問題なんですよね。
まぁつまりは望んだ結果は得られなかったんですよ。完全無欠のハッピーエンドとは絶対に言えないでしょう。
だからこそ心にしこりのようなものが残るし、無邪気に面白かった! とは笑えないんです。
予想外に展開される物語は面白くはあるけども、望まない結末に行ってしまうことも多いから悩みどころですね。
別に望んでいる終わり方と言うものがしっかりと固まってるわけじゃないんです。
ただ、ハッピーエンドであってくれたら。
心の弱い萌え豚野郎である私は、どうしたってそう望まずにはいられないのですよ。
では各章の感想に行ってみたいと思います。

【第一章 ヒスイの排撃原理】

「これが、ミステリーであるのなら――そういう、邪道の推理ですよ」

ぶっちゃけた話、体験版でやった時には期待はずれと思ったものですよ。
なんか凄いらしいってんで体験版をやってみて、そんなに言うほど凄いか~? と思ったのを覚えてます。
体験版が終わるまでずっとこのレベルなら買いはしないだろうなと。
まぁ確かに? 自分が同じ状況に陥ったとすれば、イジメの犯人にはびっくりするだろうとは思います。
現実的に考えた場合の意外性は果てしないものでしょうし、
物語的に考えたって意表を突けるだけのポテンシャルはあると思います。
ただ、どうしたって私達プレイヤーは神の視点に立たざるをえないわけでして、
そこから見るとどうにも陳腐に思えてなりませんでした。
これは邪道の推理によって過程をすっ飛ばしたからそう感じるのか、
それとも割と早い段階で犯人に気づいたからなのか。
どちらなのかは分かりませんが、とにかく、この章を一言で表すなら期待はずれ、と言うことになります。
まぁ最初ですし、魔法の本と言う超常の存在の説明をするための導入なんだろうなとか思ってましたね。
あとはせいぜい妃可愛いくらいでしょうか。なんせ体験版やった時には、
既に主人公に好きな人がいるどころか両想い的な感じですらある中でどうやって話を展開するんだろうか。
それともマルチエンディングじゃないのかな。いや、公式サイト見る限り普通に各ヒロインエンドあるっぽい。
他のヒロインとくっつくイメージが湧かない。と言うよりなんかくっついてほしくない。
よっぽど上手くやらないと妹以外のルートは到底認められそうにないなぁ。
なんてことを思ってましたからね。この時は。

【第二章 ルビーの合縁奇縁】

「でも、この物語を通して少しでも夜子が笑ってくれるなら、
 意味はなくとも、意図はなくとも、意義はあったのだと思います」


一章で下降した期待値がちょっと上がりました。
お? これなら期待出来るんじゃないか? と思いましたね。
まさかルビーなんて魔法の本は存在してなかったとは。これにはすっかり騙されました。
ただまぁそれでも体験版のときは買うかどうかは微妙なラインでしたね。
妃がものすごく可愛かったからそのためだけに買ってもいいかな~とか思ってました。
製品版のときに最初からちゃんとやったので、三章までは2回やりまして、
オチがわかってる状態でプレイしていた感想は思い込みって凄いなーでした。
あとは……夜子って実は外の世界も求めるんだなーとか……ですね。
今となってはラノベの鈍感主人公バカにできないんじゃないだろうかってくらいバカ丸出しな感想ですね、コレ。

【第三章 サファイアの存在証明】

どうすることもできなくて。
その真実に抗うことが出来なくて。
結局、物語はバッドエンドで終わってしまうんだ。


体験版はここで終了。終わった時には買うのは確定してました。
それくらいテンション上がりましたね。神ゲーの予感がしてましたよ。
ここに至る前からずっと思ってましたが、デレた妃がもう本当に本当に可愛くて、
妃のためだけにゲーム買ってもいいとすら思ってたところでまさかの妃退場。
それこそ本当に妃が退場でもしない限りは他ヒロインとのルートなんて可能性はないと思ってましたが、
まさか本当に死ぬとは。と度肝を抜かれたときにすかさず、
“開かれていたのはサファイアじゃなくてオニキスでした!”なんて新事実が出てきたんですもん。
ここからきっと、妃を助け出す方向で話が進むんだろうなぁとか、
他ヒロインルートって妃を助けられなかった場合の話なんじゃなかろうかとか、
色々と体験版終了時には思ってましたね。
でも、製品版ではいきなりブレーキを掛けられます。
体験版には収録されていない、第三章残りのわずか数行で、
オニキスについては終わるとは思っても見ませんでしたね。
まぁオニキスどころかある意味、「紙の上の魔法使い」という話そのものがここで終わったとも取れるんですが。

完全なる停滞を迎えた俺に、この先何を語る事が出来るのだろう?

この一文に、一体どれだけの意味がこめられていたのか。
本当、笑い話にもなりゃしない。

【第四章 アメシストの怪奇伝承】

「――大好きです。私と、結婚を前提に付き合ってください」
「私と一緒に、死んでくれませんか」


盛大な肩透かしを食らって戸惑ってるところで始まった第四章。
どうやら日向かなたがメインの章みたいで、
減ってしまったヒロインを補充するのが目的か、なんて思ってましたかね。
ヒスイで色々こじれた関係を正し、かなたをちゃんとヒロインとして迎え入れた章。
ぶっちゃけヒスイのときに少し関わったくらいで完全に部外者でしたからね。
かなたをヒロインに昇格するにはこれぐらいのことは必要だったんでしょう。
いや~サファイアも頑張るな~。
ヒスイとアメシスト、どちらもかなたはヒロインだったり主人公だったりしたわけで、
言ってみればその物語の中では一番輝いている存在なはずですが、
本来の彼女を知ってると宝石の煌きに呑まれてる時のほうがくすんでるように思えますね。
公式サイトのストーリーにおいて、日向かなたには煌きと言う言葉が当てはめられています。
彼女を表すのにここまでぴったりな言葉もそうないと、今なら思いますね。

【第五章 アパタイトの怠惰現象】

「……なあ、妃。見ているか」
「お前の遺した偽者の本は、それでも確かに機能しているよ」


たいした事件は起こらない箸休め回。
裏で魔法の本が開いてはいるものの、幻想図書館としてはほとんど関わらずに終わってしまいました。
とばっちり的な何かが飛んで来はしましたが、それでもやはり事件と言うほどのものではなく、
日常回と呼ぶにふさわしい章でしたかね。正直あんまり覚えてないです。
ただ、ここが終わると物語は本格的に動き出しますからね。クリソベリルが本気出してくるといいますか。
だから日常回であると同時に溜め回でもあるのでしょう。
まぁ、日常回なんて総じて溜め回でもあるのかもしれませんが。
出来れば、アパタイトのような日常が繰り広げられて欲しかったなと、心からそう思いますね。
まさしく、どうしてこうならなかったってヤツです。

【第六章 ローズクォーツの永年隔絶】

「瑠璃君のことを、心から愛しています。理央と生涯をともに過ごして欲しいです」
「――だから、理央のために、人間をやめて吸血鬼になってくれませんか?」


全国の理央ファンの皆さん、お待たせしました!
六章目にして、ようやく伏見理央にスポットライトが当たります!
でも、こんなことならスポットライトなんて当たらないほうがよかったよとなるお話です。
クリソベリルによって吸血鬼となってしまった理央。このまま物語が語られると死んでしまいます。
しかし、それまでは自分は自由に生きられると言うことで、理央は紅水晶を望みます。
色々と説明して欲しい事が増えていく中、新たに謎と言うか、違和感が出現する第六章。
ゲーム初の選択肢も出現して、ルート分岐もいたします。
まさかどっちを選んでもロクなことにならないとは思いませんでしたよ。
上選ぶとすぐに理央死んじゃうんだもんなー……。
ヒロイン4人中2人も死ぬとかどんな鬱ゲーだよとか思ってましたかね。
まぁこの時はまだ、妃が本当に死んでしまったとは思ってなかったんですが。
愚かなことにも、オニキスに希望を見出してたんですよ……。無駄でしたがね。


【第七章 ブラックパールの求愛信号】

「あはっ! そんな脅しになんて、屈しません。私は、脅す側の人間ですよ?」

クリソベリルが本当にうっとうしくなってきた章。まさしく腐れ魔法使い。
黒真珠はドッペルゲンガーを作り出して色々とやらかすお話ですが、
彼女もこのドッペルゲンガーと似たようなものですよね。
まぁ、理性が邪魔する欲望を叶えるドッペルゲンガーより、
願いを嫌な方向に拡大解釈してやらかしてくる彼女のほうがよっぽどタチが悪いですけど。
いや、拡大解釈はしてはいないのかもしれません。
見通しや考えが甘かっただけで、別に妃や瑠璃を殺そうなんて考えてはなかったですし。
紅水晶にしたって、どんな結末だろうと理央は死なないのだから、
思いっきり殺そうとしてくるドッペルゲンガーよりかはマシなんでしょうか?
でも黒真珠は危なかったですしねー。一歩間違えば人死に出てたでしょうし。
もともとどういうつもりで黒真珠を開かせたんでしょうかね。
とんでもない失敗を既に2回もしてるのだから、もう少し思慮深く行動してもいいんじゃないでしょうか?
この章はかなたの魅力が爆発してましたね。ともすれば狂ってるとも取れるほどの強さを持つ彼女。
やっぱり、魔法の本の登場人物なんかになるより、ありのままの彼女のほうが煌いてます。
そして章の最後に出てくる驚愕の真実。
妃ファンの私としましては、この段階から微妙に嫌な予感はしてたんですよ……
理央同様、妃も報われることはないんじゃないか……と。はぁ…………。

【第八章 フローライトの時空落下】

「――瑠璃の事が、大嫌いです。一人で勝手に、幸せになって下さい」

いや、もう……ね。当時の絶望感はハンパなかったですよ。
どうあがいても絶望と言うか、どっち選んでも悪い予感しかしないと言うか。
オニキスについてほとんど語られていない以上、妃生存のフラグは折れてなかったと思うんです。
少なくとも、私は未練がましくもそう願ってました。祈ってました。
例え妃本人の口から否定されても、それでもどこかで信じてたんです。
でもね。ルート分岐しちゃったら、もう無理じゃないですか……。
妃が生きているかもしれないと思っていた一番の理由は、いささか邪道な考えですが、
公式サイトにHCGとかがあったからです。体験版では全部回想かもなんていってましたが、
いくらなんでもそこまでの暴挙に出るとは思えませんでしたからね。
そこに紙の上の存在なんてチートが出てきて、歪んではいるものの妃が蘇ってきたりなんかしちゃったら、
本物は死亡してても問題はなくなるってことじゃないですか。
この流れは意表を突かれまくって、凄く凄く、本当に本当に面白かったけれども、
体験版が終わった時に望んだ結末はどうあっても迎えられそうにないと悟った時の虚しさはなかなかでしたねー。
あぁ、やっぱりこのゲームのメインヒロインは夜子なんだな。他のヒロインとかルートも含めてオマケなんだな。
かなたもどうせアレな感じで終わるんだろうなーとか思ってましたねぇ この 時 は!!


【第九章 ホワイトパールの泡沫恋慕】

「――キミのことが、大好きなの。だから、だから、ずっと傍にいて欲しい」

より一層謎が深まった章。サファイアやオニキスの例があるように、魔法の本は人の記憶も改ざんする。
だから何が正しくて何が間違っているのかの判断が全然出来ないんですよ。
白真珠の物語はクリソベリルいわくノンフィクション小説らしいし、
もう何を信じればいいのか分からなくなってましたね。
だからと言ってクリソベリルの言葉を鵜呑みにするのは愚の骨頂だったわけですが。
白真珠の時の夜子は可愛かったですね。最初はここからどうやったらあんなに嫌われるのかと思ってました。
セッ○スし始めた時には本気であせりましたからね。
瑠璃のほうに余裕がまったくなかったので、もしかしてこれが原因なのかとか邪推したりもしました。
と言うか……闇子さん頑張りすぎじゃないでしょうか?
魔法の本一冊書くのにどれだけ寿命削れるのかは知りませんが、少なくとも5冊は書いてますよね。
それだけ夜子のことを愛してたんでしょうが……愛すのではなく、信じてあげればよかったのにと思います。
結局白真珠で正しかったのは瑠璃と夜子が出会う前の物語ぐらいでしょうか。
まぁ父親が夜子のことを庇っていたのかはちょっと微妙ですが。
だって本命でもない人との間に生まれた忌み子なんてそこまで必死に守れるものでしょうか?
最初からずっと裏切ってたわけだし、最終的には見捨てるんですから、
それを確かめることにあまり意味はないのかもしれませんね。


【第十章 オブシディアンの因果目録】

物語は、一年前のあの日に、終わってしまっていた。

黒い宝石の割にはしょぼいですよね、コレ。実際問題どこら辺が悲劇なのでしょうか?
過去の、悲劇的な事柄を綴った物語と言う意味で悲劇なのかもしれませんね。
それに、宝石の色によって決まる物語の傾向はあくまで傾向であり、
全部が全部、と言うわけではないとも言われてましたしね。
メラナイトのように拍子抜けな黒い宝石もあれば、紅水晶のように予想外なものもありますから。
体験版のときから、引っぱりに引っぱってようやく語られたオニキスの真相。
とっくに覚悟はしてましたが、それでもやはり衝撃でしたね。
何かが少しでも違えば妃は死ななかったと思うだけに、殊更に残念です。
まぁ、黒曜石が語った真実はそれだけじゃないんですけど。
ヒロインどころか主人公が死んでるとか。予想外にもほどがある。
よくもまぁ自分が死んでるかもなんて予想できたもんだ。
解決編のごとく、一気に謎が解けていきはしましたが、
明らかになった真実のせいで物語の着地点がまったく見えなくなってました。
どこまで行っても先が読めないストーリーですよ。それが面白いんですけどね。

【第十一章 サファイアの存在証明】

日向かなた
「ずっとずっと、大好きでした。
 瑠璃さんのことが、ほんとうに本当に――大好きだったんです」


章タイトルは推測です。でもたぶん間違ってないでしょう。
本筋ではありますが、個別ルートみたいなもの。
と言うより、このゲーム自体が誰かと誰かが結ばれる恋物語と見た場合、
その誰かは瑠璃とかなたなのだから、本編=かなたルートと言っても過言ではないのでしょうね。
本来紡がれるはずのなかった物語を振り切り、4年越しに物語は正しき姿へと収束する。
謎はすべて語られ、あとは物語の幕を引くだけ。
まさかかなたがメインヒロインだったなんて思いもしませんでしたよ。
体験版が終わった段階で、一体誰がこの展開を予想できたのでしょうか。
道理で店舗特典が妃や理央を差し置いて2店舗あったんですね。
「上質なプロットには、無駄なシーンが一切ない」とは、ヒスイでの妃の言でありますが、
よくもまぁこんなセリフを言わせたもんだと感心しましたけれど、
これほどのことが出来るライターさんだったんですね。
思い返せばあちらこちらに伏線が転がっていて、本当に無駄なシーンなんてないと思えるほどの話。
望んだ結末は得られませんでしたけど、これこそが本来の物語なのであり、納得せざるを得ないのでしょうね。
まぁ多少の不満は残りますが。メインヒロインはかなたであり、妃のほうが間違った相手だった。
妃ファンの私としては物悲しくはありましたが、ちゃんと理解はしています。
でも、4年前に瑠璃とかなたが積み重ねたものをこちらは知らないので、
はい、そうですかと簡単に引き下がりにくいのもまた事実。
妃を愛していたことも本当なのだから、やっぱり妃と幸せになる結末も見てみたかったと思うのは、
それほど大きなワガママではないと思います。
それに、この瑠璃は紙の上の存在――言ってしまえば“偽者”です。
命令によって縛られていない以上、接する上での差異なんてないでしょうから、
本物と偽者という区別に一体どれほどの意味があるのかは分かりませんが、
妃がどうしても認められなかったように、偽者は偽者なんです。
その事実をどう受け止めるかはそれぞれの価値観次第でしょうから、
かなたがいいといえばいいんでしょう。
幻想水晶のように、真実を知らないまま結ばれるよりかはいくらか誠実ではあるのでしょうが、
それでもどこか、何かが違うように感じるのは私だけなんでしょうかね。
まぁこれは、読者としての視点であって、自分が当事者であるならば、
本物とか偽者とか考えるのはバカらしく思うのだろうなとは思いますがね。

【第十二章 ラピスラズリの幻想図書館】

「――好きという感情が、本当に、怖かったの」

真実を知った夜子は魔法使いの誘いに乗ってしまう。
そうして書き上げた魔法の本『ラピスラズリの幻想図書館』。
正しい意味での“幻想”図書館。どこまでも空虚な妄想の産物。
ここまできても、それでも他者を傷つけようとはしない夜子は、やっぱりクリソベリルとは違うんでしょうね。
引きこもりを外に連れ出すのが大変なのは、いついかなる時においても変わらないようですね。
いろんな人に後押しされて、ようやく自分の気持ちと向き合って、
覚悟を決めて生まれて初めて告白をして、予想通りにフラれてしまう。
それでようやく一歩前進。想いは結局叶わなかったけれど、それでも成長は出来たはず。
本来なら4年前に終わって、始まることすらなかったはずの物語「紙の上の魔法使い」。
歪められて続けさせられた物語も、1年前に完全に終わってしまったのに、
それでも台本を用意し、キャストを変えて無理矢理にでも続けさせた。
もうどうしようもないけれど、せめて夜子だけでも幸せにするための物語を。
だから、この物語の主人公は間違いなく遊行寺夜子である。
どうしたって蛇足でしかなかったし、続けさせた人間の意思にすら反していたけれど、
夜子を主人公として、彼女が成長するための物語として捉えたならば、きっと意義はあったのでしょう。
ラストで散歩に出かける夜子の笑顔は、なかなかに眩しく見えましたから。
結果的にフラれはしましたが、きっと彼女は幸せになれるはずです。

【第十三章 煌きのアレキサンドライト】

「だから妾は、紙の上の魔法使いになったの。あいつらが求める最悪の人物像に、なってやったの」

茶番。紛うことなき茶番である。
公式的にはトゥルーエンド。別にその見解を否定するつもりは毛頭ありませんが、
茶番であることに変わりはありません。
でも、確かに茶番ではありますが、必要だったとは思います。
なぜならこの物語は、ことここに至っても主人公は夜子であり、
彼女は――アレクサンドリアは、救われてもいい存在だからです。
弱かった主人公が、いろんな出来事を経て成長し、強くなる。王道中の王道ですね。
このゲームも、夜子を主人公としてそんな王道を歩んできました。
まぁ、その手段として失恋が用いられるのは珍しいように思いますが。
誰かのレビューで見かけた表現ですが、失恋ADVとはよく言ったものです。
そんな王道の物語には、己の弱さや影、闇の部分を受け入れるというイベントが存在します。
クリソベリルを受け入れるというのは、ぴったりとこの構図に当てはめられるのですよ。
だから、夜子を主人公としたこの物語において、クリソベリルを受け入れるのは自然な流れと言えるわけです。
でも、瑠璃と妃が死んだのは当人たちの責任ですが、原因を作ったのはクリソベリルで、
彼女はこの悲劇を回避するためのカードを持っていた。
面白半分で妃にネタバレしなければ。魔法の本の終わらせ方を教えていれば。
自暴自棄に瑠璃に真相を教えなければ。こうまで取り返しの付かない事態になることは避けられたでしょう。
クリソベリルを許すことなんて出来ないし、許されていいはずもありません。
彼女が背負っている罪は決して贖えるものではないでしょう。
その罪があるからこそ、どんな事情があろうと救われるべき存在とは言えません。
ですがそれでも、彼女は救われてはいけない存在ではないのです。
アレクサンドリアの人生は、本当の意味で、誰にも愛されなかった彼女の境遇は、
間違いなく登場人物たちの誰よりも悲惨でした。
彼女は死の間際に全てを憎んで、呪って、恨んで、そして死んでいきましたが、同時に自身を責めていました。
ああいう状況で、自分を悪人だと卑下するキャラは多いですが、私はこの考えには納得できません。
過去の出来事において、彼女に落ち度は全くないからです。
言い分は分かります。考え方も理解は出来ます。それでも、彼女を責める権利を持つものはいないはずです。
それこそそんな権利を持っているのは唯一彼女だけで、彼女はその権利を行使してしまいましたが、
“私は悪くない”と開き直っても良かったでしょう。
ここで己を責めたのは、それだけ彼女が優しかった証明に他なりません。
誰だって教わったことしか出来ないのですから、それしか教えられてこなかった彼女には、
何をどうすることも出来なかったのです。
それでも彼女の何かが悪かったと言うのなら、それはひとえに運とタイミングでしょう。
そんな自分の力の及ばないところで起こった問題に対して責任を感じる必要はないのです。
このような過去を持つ彼女だからこそ、救われてもいい存在だと言えるのですよ。
少なくとも、他のヒロインたちに与えられた程度の幸せくらいは手にしてもいいはずです。
救われるべき存在ではなく、救われてもいい存在。ゆえに彼女は救われなくても仕方ないといえます。
つまり最後の選択だって、どちらを選んでも正解とはいえないのでしょう。
公式的にはこちらがトゥルーだとしても、どちらが正しいかを決めるのは、
結局はプレイヤーたち次第と言うことですね。
この結末を迎えたことで得た光景は、確かに暖かく光ってるように見えて、
選択が間違いではなかったと保障するものかもしれないけれど、
かつてそこにいた少女の姿はなく、その中の一つは本物とすり替わったマガイモノ。
どうしようもなくなってしまった物語の中で、最良の結果を得ることが出来る可能性を手にしたのかもしれないが、
それでも。ハッピーエンドとは言えないですね。

【蛍色の光景】

「――ありがとう、蛍」

予約特典の追加シナリオ。妃に拾われ、かなたに引き取られた猫・蛍の視点で語られる、舞台裏の話。
結構メタ的な扱いなので、いろんな意味でギリギリの発言が飛び出したりします。
トゥルーエンドの後日談と言う位置づけで、前半はヒロインたちのゲーム全体を振り返った感想語りになります。
チョイチョイ本編では語られなかった設定や裏話が聞けたりするので面白かったです。
そして後半は、蛍と言う猫から見た月社妃という少女の実像。
彼女は確かに、どこにでもいる、泣き虫な女の子でした。
これを見る限り、ライターも十三章が茶番だというのは分かってるみたいですね。
さしづめ蛍は妃ファンの代弁者ってところですか。
妃という少女の本質を垣間見ることが出来る、良いアペンドでしたね。
その分物悲しさも倍増しましたけれど。

さて、全体は終わったんでここからは個別ルートの感想です。まずは理央から。

【ローズクォーツの永劫輪廻】(理央ルート)

伏見理央
「バッドエンドなんて、呼ばないで」

本筋から分岐する形で出てきた理央ルート。
このゲームもある意味個別ルートなんてあってないようなものですよね。
重要ではあるのでしょうが、全部が所詮はifであり、まっとうな攻略とは呼べない代物でしょう。
と言うよりは理央と妃が、ですかね。かなたは一応マトモだと思いますし。
まぁあのエンドはかなたエンドじゃないみたいですが。
理央と妃の時は最後に○○ENDと書かれてましたが、かなたの時はENDとしか書かれてなかったですから。
本筋から外れてるので謎が説明されたりはせず、それどころか新たな謎が出てきたルート。
少しはイチャラブしてましたが全体的には暗い印象のほうが強いでしょうか。
終わった時には素で呆然としましたからね。“え? 終わり? ……え?”みたいな。
もう一回やれば違う結末になるかもなんて思ってスキップで何周かしましたし。
全部が終わってもう一度考えてみると、もう本当にこのルート救いがなさ過ぎますよね。
そもそもが奇跡で成り立っているものであり、酷い見方をすれば理央の自己満足のためだけのルート。
最後の描写を見る限り、紅水晶の時に『四條瑠璃』の設定を書き換えたんでしょうね。
そうまでしてもあんな結末にしかたどり着けない、そうまでしなきゃあんな結末にすらたどり着けないのだから、
伏見理央と言うキャラが不遇すぎて泣けてきます。
いや、もう本当に理央って不遇すぎないですかね? 個別ルートですらあんな扱いとか信じられませんよ!?
ヒロインですよ。ヒ・ロ・イ・ン!
ジャンルにもよりますが、エロゲーのヒロインなんて普通幸せになってしかるべき存在でしょうに。
理央ファンの方は一体どんな心境でこのゲームやってらしたんでしょうか……。
個人的には4人の中で理央の順位は一番下なのでそこまでダメージは……まぁ、ないんですけど。
ファンの方には悪いんですけどね。
ただ、この結末が可能性としては一番理央が幸せになれるルートではあったんでしょう。
設定的に、たとえ一時でも付き合えた、もっと言うなら選択の時に好きだと言ってもらえただけでも奇跡ですしね。
視点を変えれば確かにこれはハッピーエンド。それでもやはり、これをそう呼べる人は少ないでしょう。


【フローライトの怠惰現象】(妃ルート)

月社妃
「私は……!」
「瑠璃と普通に恋をして、普通に生きていられたら、良かったのに……!」


万感の思いをこめた言葉っていうのはこういうものを言うんじゃないでしょうか。
恐らく、全妃ファンがめちゃくちゃ共感したであろうセリフ。本当に、どうしてそうならなかった……!
選択はなされたあとの、まさしく怠惰現象と呼ぶにふさわしい蛇足の章。
それでもまぁ。妃とイチャラブ出来て嬉しかったです。サファイアの時の方がイチャイチャしてたとかは知らん。
結局このあとどうなったんでしょうかね。紙の上の存在である以上、あれじゃ瑠璃は死にませんし。
もしかしたら、『四條瑠璃』に色々書き加えられて都合のいいように弄くられたかもしれませんね
それなんて鬱ゲー?
そんなことにならなかったとしても、まぁどうにもならないでしょう。
この時の瑠璃じゃあ真実には打ち勝てそうにもないですから。
裏で色々と好き勝手やってくれやがったクリソベリルになんとか一矢報いもしましたので、
多少は溜飲も下がる……のでしょうか? 結局バッドはバッドですよねー。
この結末は当人たち以上に周りに影響が出すぎます。夜子とか心を病んでしまいそうです。
ゲーム開始時から付き合っていた2人が愛を貫いて散っていったわけですが、
それでもやっぱり歪ではありますね。もともとこの2人が付き合っていること自体がおかしいんですから。
ぶっちゃけこのゲームって最初から蛇足なんですよ。本来ならありえるはずもないことですから。
4年前にすべてが終わるはずだった物語。どれだけ拡大解釈しても三章以降は蛇足です。
それが歪められている以上、かなたと結ばれる以外に正しい結末なんてのはないんでしょうね。
実質的には偽者と偽者との恋愛模様。見方によってはこの関係が一番幸せなのかもしれません。
一番不遇なのは理央のようにも見えますが、妃は個別だろうが本編だろうが死んでますからね。
普通に考えればこちらの方が不遇なような?
でも彼女は彼女なりに己の想いを貫けたわけですからね。
そこが彼女の境遇を不遇だと思わせない要因になっているのでしょう。

【ファントムクリスタルの運命連鎖】(夜子ルート)

遊行寺夜子
「好きにしたらいいじゃないのっ!
 あたしは、キミのことなんて大っ嫌いだけど……!」
「それでも、傍にいてくれるなら、全然、別に、構わない、からぁ……!」


すっごく戸惑ったのを覚えてますねー。ここへと至る前に、既にメインヒロインは夜子だと思ってましたから。
そもそも公式サイトでだってキャラ紹介とかの順番はいつも夜子が最初でしたし、
セオリー的には当然夜子がメインヒロインですからね。
そこでここに来てルート分岐ですもん。普通は戸惑いますって。
今までのことから個別ルートは総じてバッドで終わると思ってましたからなおさらですね。
で、蓋を開けてみればようやくハッピーエンドと呼べるものではありました。どこか空虚でもあるのですがね。
でも、悲しんでる人は誰もいないですし、今までのに比べるとハッピーエンド感が段違いですし。
最善ではあっても最良ではない理由としては、
誰も悲しんではいなくとも、誰かは満たされていないから、とのことですが、
この誰かってたぶんクリソベリルですよね? だったら別にわざわざ満たす必要もないような気が……。
クリソベリルは、救われてもいい存在ではあると思いますが、救われるべき存在ではないと思いますので。
このゲームにおいて合計3回デレた夜子ですが、どれが一番可愛かったでしょうか。
白真珠の時の深窓の令嬢みたいなタイプ。幻影水晶の時の明るく前向きなまさしくメインヒロインみたいなタイプ。
そして素の状態のツンデレタイプ。前2つの時は、意味が分からなくて困惑したり、
嫌な予感がしてハラハラしてたりしたので、安心してニヤニヤ出来る最後が一番良かったように思います。

【総括】
体験版が終わった時に望んだことは、四條瑠璃と月社妃、この兄妹の幸せな結末でした。
“一緒に不幸になろう”だなんて言葉でしか愛を囁けない兄妹のハッピーエンドが見たかったんです。
結局望みは叶いませんでした。
真相からいって、もともとがありえない状態だったのだから、こうなってしまうのも仕方なかったのでしょう。
結末に理解はしてるし納得もしています。でも、満足はしていません。
驚かされてばっかりで、本当に本当に面白かったですが、それでも満足は出来ません。
これは自分の思った通りにならなかったからと文句を言うという、クズな発想であることは分かってますが、
それでも私は、瑠璃と妃のハッピーエンドが見てみたかったんです。
せめて“向こう”では、幸せになっていて欲しいものです。
こんなことを言うのは、本来私のガラじゃあないんですけどねぇ。
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